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- 『2000・人から始まる』
ライトに照らされ、巨大な造形が舞台中央に少しずつ姿を現した。星の形に組まれた無数の青竹の美しい均衡。光の当たり方によって、その放射状の腕が動いているかにも見える。
そこに、静かに音色が響いてくる。耳に直接届くのではなく、まるで、空間に広がる光のよう_。昨年十一月二十日、大胡町生涯学習センターで行われた県民芸術祭の笙公演『笙 宇宙。』で、観客は不思議な体験に酔いしれた。
造形作品、舞踏、声楽と雅楽が渾然一体となって「宇宙」をつむぎ出す現代的な舞台。作曲・構成と笙の演奏をつとめたのは高崎市出身の東野珠実さんだ。演奏者と観客がともに体験する一期一会の舞台。世界で活躍する音楽家は、この故郷での公演で自分の表現の方向性が見えてきたのを感じていた。〜中略〜「古楽器と最新メディアの両方を使って、体全体で感じられる音楽を作りたい」。例えば、呼吸のリズムをコンピュータの電気信号に変えて音と映像を連動させ、雅楽と共演させる。現代的でユニークな表現活動が、世界的に評価を受けている。「世界中どこででも演奏できる時代だからこそ、縁や絆を意識していたい。」出会いを必然に変える舞台を、これからも作り出したいと考えている。
松本由佳
平成12年1月6日 読売新聞より抜粋。
- 新世代ファイル 『自空間』
〜両輪・体内の音楽・呼吸〜
1300年の伝統を有する雅楽の奏者と、最新鋭のコンピュータを駆使する作曲家。雅楽の魅力を「長い年月をかけて磨き抜かれており、それだけのエネルギーを持っている」と語る。一方のコンピュータ・ミュージックについては「現代人の私たちにとって最新の楽器の一つ」と位置づける。「モーツアルトが新しく現れたピアノのために作曲したように、新しい楽器を使うのは音楽家の使命。そこに雅楽のエネルギーを注入しているんです。」と語る。〜中略〜.
「音楽の骨の部分は人間の呼吸にある」というのが信念だ。笙は、吹いても吸っても音がでる、世界で稀な楽器だけに、「いい呼吸」を聴き手に送ることには敏感になる。日本人のルーツを多くの人に全身で受けとめて欲しいと願っている。
原島美穂
平成11年11月22日 上毛新聞より抜粋
- ソプラノと笙の出会い
〜両輪・体内の音楽・呼吸〜
第七回奏楽堂日本歌曲コンクール作曲部門本選会が5月26日に行われた。応募曲84曲から譜面審査を通過したのは8曲。その7曲までがピアノに伴奏をつけた古典的な"歌曲"。その中でひときわ新鮮だったのが、笙とソプラノのための曲、東野珠実作曲「詩集『目覚める寸前』より 魚の骨」であった。
演奏が始まると会場の空気が一変した。テキストは、時空を越え浮遊し流動する世界を描いた川崎洋の詩。笙を演奏した野田節子は、静謐さと情熱を兼ね備えた豊かな表現力で本島阿佐子の歌い上げる言葉とみごとに"共演"。充満する音の中で、映し出される風景に漂っているような、美しく心地よいひとときだった。
「その音が空間に発せられたときどう響くか。私はその空間に音の種を蒔く、という考え方をしています。」。その種がどう発芽し枝葉を拡げるかは空間や演奏にもよる。そして最後にどんな実をもぎ取るかは聴衆次第・・・。東野によるとこれはいわゆる作曲という形でなく"音響生成"という考え方だそうだ。
国立音大作曲家を卒業後慶應大学大学院でメディアと音響知覚について研究しながら、コンピュータ音楽の創作に取り組んでいる。一方宮田まゆみに師事し伶楽舎に所属する笙演奏家でもある。東野はいわばバイ・ミュージックの世代。「私にとって空間における音響合成をアナログで行う笙も、デジタルで行うコンピュータも等距離にある。そのこと率直に表現していきたい」東野のようなニュータイプはこれからどんな音楽を作って行くのだろうか。
伊藤由貴子
1996 July 邦楽ジャーナル
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